小惑星探査機"はやぶさ"帰還プレイベント 「地球へお帰り!はやぶさ」 2010/06/06 於:日本科学未来館 話者:川口淳一郎(「はやぶさ」ミッション・プロジェクトマネージャ)    Trevor R. Ireland(オーストラリア国立大教授:イトカワ試料分析予備実験関係者) ※メモからの書き起こしなので誤りを含む可能性あり、注意。 ※今回は口調の再現は無理でした。ごめんなさい 【テラキンさん前説なう】 Twitter で寺薗淳也氏(会津大)も聴衆として来場と知る Twitter 宇宙クラスタ → え、じゃあテラキンさんも喋るべきだよ/あらこんな所にリポDが → 聴衆として参加していた有人ロケット研究会の大貫氏がテラキンさんを口説く → 未来館スタッフさんたちも「やれー!やれー!」ムード → というわけで: 寺薗(以下「テ」):  えーと、今日は完全に見学者のつもりで来たのですがなぜかこんな所に(笑)。  こんにちは、私も「はやぶさ」に関わっていました。寺薗です。 司会(科学コミュニケータ大西。以下「大」)  どう関わったのでしょう? テ:真面目なほうとしては(会場笑)イトカワの3次元の着陸モデル作りを会津大学で。   「はやぶさ」の着陸シミュレーションのため必要でした。改良モデルを今も作っています。   あとは広報。恒例の強力な茶色の瓶は今日は持って来てませんが(会場笑)   着陸のときは12時から翌日4時までぶっ続けでブログを更新しました。   生中継というのは初めてで何をやっていいかもわからないという所から始めました。   今 Twitter などでリアルタイムに(情報提供を)やっていますが生中継は「はやぶさ」が初めて。   私も(今日のイベントをTwitterで)中継しようと思ったらこんな所に。誰か私の代わりに書いておいて下さい(会場笑)。 大:元々シミュレーションの研究を? テ:元々は地質のほうです。 だから(天体の)形を見たい。 大:イトカワのしびれる地形は? テ:しびれる……くびれですかね。(会場笑)   いびつな形とはわかっていたが2つの塊がくっついた形とは思わなかった。   2005/09/11にイトカワの初めての写真を見たとき「万歳!」となるはずが「……え……っ……?」となった。 大:予算やマンパワーのせいで NASA や他の機関にとられてきましたが小惑星は(探査ミッションを)取られなかった。   ド級の発見でしたよね テ:周りを回ってここまで舐めるように見たり、着陸したりは世界初。   あの着陸は「いなくなっちゃった」というものでした。後からイトカワの上に留まっていたらしいとわかったんです。   通信に往復で30分かかるので最初はそれに慣れるのが大変でした。   それに慣れると日常に戻りにくい(会場笑)。   TVをつける時にリモコンのスイッチを押して時間差がないと気になるように……職業病ですね(笑)。 大:将来宇宙探査を志す人は注意して下さい(会場笑)。次はどんな天体に? テ:先日打ち上がった「あかつき」は金星に。内側(太陽に近い)なので日本の夏なんて比べ物にならないくらい暑い。   なにせ470℃ですから「車の上で目玉焼き」の比ではない、そういう地獄へ行くんです。   外側(外惑星)だとソーラーセイルによる木星探査計画があります。2020年頃に行ければいいと思っています。   また、「はやぶさ」「かぐや」の後継機計画もあります。   奴ら……じゃなくて、外国のかたが行く前に行きたい。 大:1番2番……の話は去年ありましたが(会場爆笑)頑張って1番を目指したいですね。 テ:1番2番を争うものだけれど皆の後押しがないとできない、「はやぶさ」でそれに気づいた。   その点で「はやぶさ」は偉大なミッションです。 大:しかしその「はやぶさ」もチームの解散は再突入の1週間後とか…… テ:経験は一度途絶えると復活しません。人間は忘れる生き物だから。だから目標を立てて動きを継続しなくては。   なんか選挙みたいですね。タスキ持ってくれば良かった(笑)。 大:2020年頃の予定について欧米はもう(ミッション構想が)出ています。   それぞれ異なる観測対象の衛星を飛ばして国際協力での木星探査という話もありますが日本は遅れ気味ですね。   どうぞ皆さん応援して下さい。 【前座:司会者泣かせのクイズ大会】 大:さて、ここで川口先生においで頂きましょう。皆さん拍手でお迎え下さい。 川口(以下「川」):こんなに多くの人に興味を持ってもらってありがたい。  皆さんの応援のおかげで地球に戻る軌道に乗れました。ありがとうございます(会場拍手)。 大:まだ講演の開始時刻には間があるので、木星から意識を戻すためにも「はやぶさ」クイズをしたいと思います。  「はやぶさ」は今どこにいるでしょう? (会場「かに座の方角」)   距離は?(会場「400万km」)   こりゃ手強い。  (問1)「はやぶさ」は月より遠い位置にいる ○ or ×? (会場殆どが ○ に挙手)   正解は? 川:(苦笑気味に)遠いです。 大:会場の前のほうの方に聞くとヤバいということがわかりました(苦笑)。   イトカワは実際の所どれくらいの大きさでしょう?(会場3列目辺り:「600mくらい」)   ……やっぱり前のほうの人に聞いちゃいけない。こっちに気を使って下さいね?(会場笑)  (問2)イトカワは東京都より大きい ○ or ×? (会場殆どが × に挙手)   正解は? 川:小さいです。 大:(GoogleMapでオーストラリアを出し)今日の中継を行う場所の1つであるクエスタコン、   こことウーメラとの距離は未来館──大阪間の距離より遠い ○ or ×?(会場殆どが ○ に挙手)   正解は? 川:遠いです。奄美大島くらいの広さの場所に落ちます。キャンベラも一時(TCM-3中に)落下ルートに入りました。 【本編開始】 大:みなさんようこそ。日本科学未来館サイエンスコミュニケータの大西です(会場拍手)。   今日はよろしくお願いします。今日はスペシャルゲストとして川口淳一郎教授においで頂きました(会場拍手)。   06/13にいよいよ「はやぶさ」が帰還します。「はやぶさ」チームの成果は日本だけでなく世界が誇るもの。   現在は再突入とカプセルの回収という最大のミッションに挑んでいるところです。   オーストラリアではサンプル解析の先生が中継で参加して下さいます。   オーストラリアはキャンベラのQuestacon(オーストラリア国立科学技術センター)、日本の未来館のような場所と   VSSEC(ビクトリア宇宙科学教育センター)とを繋いで3地点中継を行います。 川:※『「はやぶさ」。苦しみながら地球帰還へ、目下運用中。』のタイトル画像表示    https://ssl.tksc.jaxa.jp/sss/sss10/pdf/S1-5.pdf   TCMは全部で5回行います。TCM-0から数えるので5回目であるTCM-4は06/09に行う予定です。   「はやぶさ」はものすごく遠いのでどこに向かうかもわからない、それを地球の方へ向ける。近づいたらさらに修正を行います。   誤差や推進剤損失が少ないように軌道変更を設計するとTCMを5回行うということです。   先日のTCMが1番大事な修正だった。   3月末までのTCM-0〜2は地球に「落ちて来てはいけない」修正でした。   詳しい方はご存知でしょうが、「はやぶさ」は地球の昼側を通る軌道から夜側を通る軌道に遷りました。   しかしここで地球をよぎってはダメなんです。よぎると落ちてしまう。   そのため南極の下をくぐって夜側へ移すと。陰で色んなことをやっているんです。   夜側まで移してから距離をつめるわけですが、ここでもまっすぐ「地球中心へ」ではいけない。   TCM-3 の前までは他の場所へ「落ちてはいけない」んです。ニュージーランドを避けたりしてぎくしゃくした軌道。   裏ではそんなこともあります。   TCM-2は(最接近)高度を高めに保って終わっています。どんなに不確定でも「地球に落ちない」ようにやらなければいけない。   オーストラリア当局の方が相模原に駐在していて、落ちない軌道であると確かめてからサイン。   そうしてTCM-3を開始して良いとなる。   落下点は軌道変更につれて移って行く。落下点がオーストラリアに「入国」した時にオーストラリア当局の人がサイン。   今回はオーストラリアと(中継で)その話はしませんが(笑)。 大:精度はどのくらい? 川:精度で言えばイトカワのほうが厳しい。距離に対して(イトカワの最長が)500mちょっとだから。   今は「1km以内で/ウン百m」オーダー。 大:(現在の位置が)月より遠いのにウーメラに1km以内の誤差でというのがすごい 川:今(の精度)はまだ「1km以下」じゃない。TCM-4を過ぎるとそれだけの精度が確保できる。 大:TCM-4はどれくらいの期間? 川:およそ2、3時間。 【中継開始】 Questacon・ロビー氏ならびVSSEC・アンナ氏の挨拶 川:川口です。これまでどういう飛行だったか、昨日までの軌道修正の結果についてお話しししたいと思います。   ※『「はやぶさ」。苦しみながら地球帰還へ、目下運用中。』のタイトル画像に    「意地と忍耐と神頼み(Spirit, Patience and Pray)」の文字が追加される    https://ssl.tksc.jaxa.jp/sss/sss10/pdf/S1-5.pdf ※重いのでDLしてからの閲覧推奨   意地でカバーできなかった所は神頼みするしかなかった。  「はやぶさ」の名の由来について:    Hayabusa = Falcon; 降下して獲物を捕らえ(タッチダウン)再び飛び上がる。それをハヤブサになぞらえた。  「はやぶさ」の形状について:    対称な形でシンプル。直方体の本体の上に1.6mのハイゲインアンテナが乗っている。    意図していなかったが、この対称な形状がミッションを救った。(レポ主注:Z軸安定か光圧利用のことと思われる)   ※「はやぶさ2」ミッションイメージイラスト   お手元の資料にこの図があるかも知れません。これは後継ミッションの「はやぶさ2」。アンテナが平板ですね。   (「はやぶさ」は)2003/05に九州の内之浦から M-V-5 で打上げられ、2004年に地球スィングバイ。   2005/09にイトカワに到着しました。   2007年に地球帰還する予定が、燃料の漏洩、通信途絶、救出運用にリファービック……で3年遅れに。   なぜ(延長期間が)1年2年じゃないの?と思うかもしれませんが、これは公転周期の都合です。   06/06 09:00(JST)時点で 3,256,330km、4.9 km/s。   (地球周回衛星に比べて)随分遅いと思うかもしれませんが、これは「地球の重力を脱出してなお 5 km/s」ということです。   地球に再突入するときは 12 km/s になります。   ※慣性系(太陽中心座標)での「はやぶさ」軌道図   小惑星のほとんどは火星と木星の間にあります。   このうちイトカワなどは地球の近くまでくる軌道を持っていて、そういうものを地球接近小惑星、Near Earth Objectとか   Near Earth Asteroidと呼んでいます。   「はやぶさ」は地球から2,000万km まではエンジンをふかし、TCM-2までは地球に「落ちない」ように軌道を修正します。   TCM-3で「はやぶさ」の到達地点は地球に入り、TCM-4は回収に適した場所に軌道を向け直す作業です。   ※TCM-3における「軌道変更進行に応じて最終到着地点がオーストラリア東海岸からウーメラへ移る図   「はやぶさ」は西側から(オーストラリアに)入ってきます。人の多い東部は通りませんので安心して下さい。   ただこの図にある通り、TCM-3で落下地点が「瞬間的に」東部を通りました。   06/13 00:00(UTC)でアメリカ西海岸上空(276,000 km)   再突入 -10 h:(202,000 km)   再突入 -07 h 頃:九州上空   衛星は飛び出した所の上を飛ぶので、「はやぶさ」は内之浦の上を飛びます。   できれば内之浦を撮影したいです。母港ですから。でも太陽の向きの都合があるのでそのままでは難しい。   再突入 -03 h:インド北部上空でカプセル分離   再突入 -01 h:ペルシア湾上空(22,600)   再突入 -05 m:オーストラリア西海岸(600km)   おそらく-4等、-5等に光ります。火球、ファイアボールになるでしょう。   近くに行けば見えるか、といえば「はい」。   今まで火球の見える場所などについては公開してきませんでした。回収チームの展開作業などについてご協力頂くためです。   ですが展開作業が落ち着きつつありますので、作業の妨げにならないなら(火球の見える場所/方角を)発表したい。   日本上空通過時に「はやぶさ」が見えるか?についてですが、時刻はだいたい15〜17時頃。   地上からは太陽電池パドルの裏が見える形になるので(裏側は光を反射しないので)見えないかもしれません。   ※WPA近郊地図   (会見はウーメラ、ホテルはロックスビーダウンズ。    その2点を結んで正三角形を描く辺りの周囲に電探班と光学班それぞれ3、4チームが配置されている)   着地領域が回収班に都合良い場所になるよう修正するのがTCM-4です。   方探点には近づかないようお願いします。   パラシュートで減速するのか、とよく聞かれますが 12 km/s から 30 m/s まではカプセル自体で減速します。   パラシュートはその後で、10 m/s まで減速させます。   リエントリカプセルは2つに分離します。分離するとサンプル格納部とビーコンなどが引き出されます。   不正確な数字かもしれない(数字を一人歩きさせたくない)ですが高度 70〜80 km で最高温度に達して輝くでしょう。   カプセルと本体の再突入の時間差はほとんどありません。   (カプセルと本体は) 1,000〜2,000 m ほど離れますが 12 km/s という速度ではほとんど変わりない。   もし化学スラスタが生きていれば本体は再突入せず脱出する予定でした。 大:しかし脱出できず「はやぶさ」は燃え尽きてしまう。それに対する思いは? 川:(苦笑)複雑です。できれば web で見て下さい。    ※http://hayabusa.jaxa.jp/message/message_001.html   カプセルはウーメラから直行便で羽田に到着します。そのまま相模原へ運送されます。   回収作業がすんなり進めば時間はかからないが、現地でおよそ数日分の日程は確保しています。   現実は甘くありませんので、ビーコンが出るとは、パラシュートがちゃんと開くとは限らない。   もしカプセルが壊れてもカンガルーが拾わない限りは(笑)部分的に回収できるはずです。   ※各種神社仏閣のお札の数々   前からお札を買っていたわけではないのですが、2005年に行方不明になってから信心深くなりました。(会場爆笑)   ここにあるのは飛不動。   これ(中和神社のお札)は誰かが「まさか中和神社なんてないでしょうね」と言ったらすぐ見つかってしまった。   じゃあ行くしかない、ともらってきたものです。   恐縮な事に宮司さんが「はやぶさ」をご存知でした。 大:なぜ「中和」神社? 川:昨年11月にエンジンが止まってしまった。原因は「中和器」の劣化でした。   「はやぶさ」はTCM-3まで行きましたから、もう1回(TCM-4)分だけ(中和神社の神さまに)見守ってほしい。 【Questacon からの中継】 ※同時通訳の日本語からの書き起こしである点に注意。 ロビー氏、改めて挨拶。Q&A方式での進行である由、説明。 ロ:イトカワはどこにありますか? アイルランド(以下「ア」):   変わった所です。今まであまり行かなかった場所。今まで小惑星というと(フライバイ撮影の)写真しかありませんでした。   そこに500mくらいの、砂利だらけの小さな小惑星へ行ったわけです。   小さいので重力も微小。オットセイ(ラッコの誤訳か?)のような形状は2つの塊がくっついたことを示すものでしょう。   そこに着陸したというのは素晴らしい。 ロ:理学的な意義は? ア:地球には1日に2t 程度の物質が宇宙から降ってきます。半分は夜間ですから眠っていて見ていませんけれどね。   塵〜砂サイズのものが 14〜15 km/s で突入して来る。「はやぶさ」より少し速いですね。   突入する時の速度は熱に代わり、殆どは燃え尽きてしまいます。   大きいものなら──(安全を)神に祈りましょうか──燃え尽きず地表に達します。それが隕石です。   その隕石サンプルを調べる。 ロ:隕石で小惑星の分析ができる? ア:その通り。 ロ:小惑星が火星と木星の間に多い理由は? ア:木星は重力的な意味で太陽系惑星の中心的存在です。   火星と木星の間の物体が惑星に形成されるのをその重力が阻害しています。   (小天体のまま存在し続けるので火星と木星の間に小惑星が多い) ロ:隕石分析は今までもいくつかありました。 ア:「ヘンブリ」隕鉄などですね。小さくて重いのなら(M型の)隕石、あるいは隕鉄かもしれません。   (S型は)小さくて石のように見えます。(地球では)風化して変色してしまうので見つけるのが難しい。   「宇宙で」小惑星サンプルが採れるのは初めてのことです。   隕石は地球大気圏再突入で熔けて変性してしまう。「はやぶさ」で採取したサンプルなら熱変性していない。 ロ:隕石は「どこから来たか」がわからない。 ア:それは大切な点です。   たまにニュースになる「屋根から飛び込んで来た招かれざる客」(=屋根をブチ破ってきた隕石)はどこから来たかが   わからないことが多い。組成や場所がわかった例は過去1、2回くらい。 ロ:「はやぶさ」の持ち帰る試料で何が期待できますか? ア:100万ドルの質問ですね。採取できる量は1〜2gと聞いていたが、たとえ mg 程度の粒子でも   その場所は(イトカワだと)わかっていますから多くの事がわかります。 ロ:具体的には? ア:1mm 程度の大きさでも電子顕微鏡などで見れば材料が分析できます。   指紋照合のように(過去に採取された隕石試料とイトカワ試料との組成を)照らし合わせていきます。 ロ:犯罪捜査シーンのようですね。将来的なミッションについては。 ア:理学的にも素晴らしいが工学的にも面白い。   宇宙風化の影響がわかれば有人火星探査など将来のミッションにも役立つ。   「はやぶさ」は工学の集積でもあります。小さな宇宙船なのに(イトカワに)着陸できた。すばらしい!   そしてその宇宙船、ひいてはサンプルを地球にもって帰ることができる。地球に着陸させることができる。 ロ:地球への着陸プロセスと時間についてお伺いします。06/13に着陸とのことですがその成否の情報はいつ入る? ア:着陸についてはすぐに分かります。天候で問題が起きるかもしれませんが12時間以内にはわかるでしょう。   カプセルは日本のキュレーション(受入)施設まで短時間フライトで直行します。   (キュレーション施設がある)相模原で皆でカプセルを歓迎します。 ロ:試料汚染を避けるための防護服などは着るのですか?   (注:続く発言と会話が噛み合っていないため、同時翻訳が誤った可能性あり) ア:試料の熱変性を避けるため、カプセルは熱防御されている。※アブレーション材についての説明   (注:前の発言と会話が噛み合っていないため、同時翻訳が誤った可能性あり) 【未来館からアイルランド教授へ質問】   (小学生男子。「英語できない」と小声で言うのに対し、ちゃんとレシーバーありますよと手渡される) Q:「はやぶさ」が燃え尽きてしまうことに対し、どう思いますか? ア:良いことと悪いことの両方があると思っています。   良い面としては(再突入が)とても美しい光景になるということです。   ハヤブサ(falcon)が不死鳥(phoenix)となり、人々の記憶に残るでしょう。 【VSSECからアイルランド教授へ質問】   (大学生男性) Q:イトカワの静電気特性は? ア:あると考えられます。太陽光の影響によって粒子が荷電し、その移動によって磁場もできているのでは。   タッチダウン時にその影響があった可能性も考えなくてはいけません。   静電気特性があったとすれば、イトカワに着陸した時に電気的ショックが「はやぶさ」に与えられたかもしれません。 【Questaconから川口教授へ質問】   (おそらく学生。女性) Q:「はやぶさ」ミッションのアイデアはどうやって生まれたか。また携わった人数は。 川:人数については、開発時が 40〜50 人。   運用は普段は十数人ですが、現在は JAXA で(レポ主注:「日本待機で」の意味かも)20〜30人、   オーストラリア側で 40〜50 人が動いています。   あとはアイデアについてでしたか?   私は負けず嫌いだったので(会場笑)、構想がスタートした時は   「人のしていないことをやろう、アメリカもやっていないことを目指そう」   と思っていました。 【VSSECから川口教授へ質問】 Q:試料採取方法には(プロジェクタイル発射式の)他にどのような案があった? 川:方法はブレインストーミングをして考えました。   まずトリモチというか粘着テープのようなものを使う方法ですが、これはターゲットの表面に粉状のものがない   (岩だらけだろう)と想像されたためボツになりました。   他に誰でも思いつくのはハンマーやドリルで掘り返す方法でしょうが、これは重力が小さすぎて使えません。   自分自身が反動で飛び上がってしまいます。   結局は表面が砂でも岩でも採取できるようにということで弾丸方式になりました。   実際のミッションでは、指令は出したのですが発射されなくて報われませんでしたが、方法検討としてはそういう苦労を   したということです。   もし試料が採取されているならば微粒子でしょう。採れていると信じて運用しています。正規の採取手順ではありませんが。 ※Questacon、VSSECそれぞれから挨拶 川:「なぜ着陸地点がオーストラリアなの?」という質問が来なかったことが意外です(苦笑)。   衛星は南から打上げると北から帰ってきます。(レポ主注:軌道傾斜のことか?)   ターゲットがイトカワに決まった時点で(「はやぶさ」が)南半球に帰還することは決まっていました。   着陸許可をくれたオーストラリアの皆さんに感謝します。 【中継終了。会場から川口教授へ質問】 Q:TCM-3完了おめでとうございます。本体もカプセルとほぼ同時に再突入するとのことですが、   一片も残さず燃え尽きるのか? 川:計算上そうなります。耐えられるものはないでしょう。 Q:火球の動画配信予定は? 川:JAXA がやれるかはわからない。   この会場に NHK さんはいらっしゃいますか?何か考えているという噂なのですが。(会場笑)   今まで見える場所は伏せてきました。回収チームの滞在場所を確保するなどでご協力いただくためです。   しかし回収メンバの配置が終わりつつありのでそろそろ話せると思います。TCM-4が終わったら。   (中継・配信については)色んな人が色んなことをやる、何かしらの人が何かしらのことをやるという噂です。 Q:プロジェクタイルは発射されなかった可能性の方が高い? 川:そうです。メモリが飛んでしまったのではっきりとはわからないが、通信途絶前の状況を考えると不発だろう。 Q:運用室の中継配信のパブリックビューの予定は? 川:タッチダウンの時とは異なり(部屋の様子に)動きがあるとは思いませんが、中継はやるようです。 Q:「はやぶさ2」「はやぶさMk II」と構想されているが、「イトカワ再び」の構想はある? 川:今の所その予定はありません。やれたら嬉しいですが、今は色々な所、遠い所へ行くのが先決です。   遠いということは太陽から遠く低温であるということ。   つまり大きい分子が見つかる可能性があり、有機物が期待できるかもしれません。 Q:オーストラリアに落ちられないという可能性は? 川:可能性、ではなく「そうならないようにやっている」。   100秒ずれれば 40 km ずれてしまうので。誘導は時間も厳密に行っています。 Q:「はやぶさ」への関心が高まっている。専門家ではない天文好きやアニメ好きもファンになり応援している。   ファン拡大の重要性について意見を聞きたい。 川:仰る通りで、ディープな掘り下げ(専門)だけでなく裾野を広げる活動も大事です。   針で地面を突き刺すだけでは(=専門家だけを相手にしては)意味はない。 Q:『HAYABUSA - BACK TO THE EARTH -』を見た。   もし「はやぶさ」が燃え尽きずエンジンも無事だったなら本体はどうするつもりだった? 川:色々企てていました。(会場笑)   私も以前言ったことがありますが今は宇宙の「大航海時代」。ならば「係留されてまた出航する」という運用になるべき。   いちいち地面から打上げていられません。   なので地球スィングバイをして再び地球に戻るまでに減速し、ラグランジュ点に留めるということをしたかった。   キセノンを入れ直せばまた飛べるかもしれない。「はやぶさ」でそれはもう叶わないが後継機ではぜひやりたい。 Q:ミッションを10年やってきて「これは自分たちはすごかったぞ!」という自慢を。(会場笑) 川:通信途絶からの復活とエンジンのクロス運転の2つが大きかった。   もちろん自分たちも努力したが「はやぶさ」の協力がなければできなかったと思っています。   簡単に言えば「幸運だった」になるのでしょうが、「はやぶさ」自身が成長している。   「成長している」というのはプログラミングして「はやぶさ」にいろいろと教え込んだわけですが、   それを忠実にこなして達成する「はやぶさ」あってのことでした。 Q:今までずっと見守ってきた。広報という観点で「はやぶさ」の成果はいつ出る?これで終わりというのは寂しいから。 川:サンプル分析結果についてですね。観測データは既に公開されていますので。   ※http://darts.jaxa.jp/planet/project/hayabusa/index.html.ja   短くても数ヶ月、長ければ1年かかると思います。それだけ待って「何もなかった」という結果になるかもしれない。   その覚悟はしています。 (本編以上) ----------------------------------------- (本編後) ・未来館のスタッフさん方、超いい笑顔でテラキンさんと記念撮影したり「迎え酒」に(川口、テラキン両氏の)サインもらう ・聴衆のお1人が手編みの「ミネルバ型リポDキャップ」持参。  当然リポDにセットしてテラキンさんにお持ちいただき写真撮影大会 ・聴衆のお1人、『JAXA's』 Vol.005(表紙が川口教授)の表紙に川口先生のサインをいただく ……などなど、みんな色々持ち込み過ぎというか訓練されすぎ!