講演会『帰ってくる小惑星探査機「はやぶさ」』 2010/03/06(土)13:00〜14:00 サイエンスドーム八王子 話者:曽根理嗣(JAXA/JSPEC 准教授。ISASメルマガ「宇宙の電池屋」) ※手元が真っ暗な状態でとったメモを基にしているため、再現性はそうとうに低いです。 ※「満席のため、座席を詰めてお座り下さい」アナウンスあり ※「祈り」上映があるため著作権の都合上録画、録音、写真撮影NG 館長氏:  本日はお集り下さりありがとうございます。私は館長ですので「迎える側」なのですが、私もわくわくしています。  今日講演して下さるJAXAの曽根さんは今、上(プラネタリウム解説席)にいらっしゃいますが  ご紹介したいのでこちら(ドーム前方下部ステージ)においで頂けますか?  ──会場には子供さんも多くいらっしゃいますが、さて、衛星は何で動くと思います?  皆さんがお持ちのおもちゃや携帯電話は何で動くでしょう?──電池、バッテリですね。  曽根さんは宇宙用の電池、バッテリの開発に関わっていらっしゃいます。 曽根:  皆さん初めまして、曽根と申します。  今日の講演の機会を下さったサイエンスドーム八王子さんにお礼を申し上げます。 館長氏:  曽根さんは八王子にお住まいです。  息子さんが所属されているサッカーチームにも関わっているので、そのチームの子もおいでのようですね。  では曽根さん、お願いします。 ※プラネタリウムには夜空が投影され、前方にパワポ画面投影。「改めて、はじめまして」 (以下、特に記載のない限りは曽根氏の発言) 雰囲気のため、背景を星空にしてもらいました。 私は燃料電池の研究、および月・惑星探査プログラムグループでは探査機の電池の研究をしています。 宇宙科学研究本部のメルマガでは「宇宙の電池屋」というペンネームを使っています。 (※おそらく「だいち」撮影の静岡県の写真) 出身は静岡県の沼津です。富士山に近いのでよく宇宙から撮ってもらえます。 (※M-V-8の写真) 最初はNASDAに就職しまして、2003年にNASDAと宇宙科学研究所、それと航空宇宙技術研究所が1つになってJAXAになりました。 それからは宇宙科学研究本部で「はやぶさ」に関わるようになりましたが、開発・打上げの頃はまだ私は関わっていません。 むしろ(当時NASDA職員だった身にとって宇宙研は)ライバルでした。 宇宙研に行ってから幸いなことがありまして、ロケットの近くにいられるようになりました。 携帯電話とかはどういう時にバッテリを使うでしょうか? コンセント、電源にさせなくなった時ですね。 ロケットも同じで、アンビリカルケーブルというもので電源に繋がっています。 女性にはわかるでしょうが、「アンビリカルチューブ」=「へその緒」です。 ロケットも「へその緒」を引きちぎりながら飛んで行きます。 私はロケットや衛星のバッテリ残量をチェックするため、ロケットのすぐ隣の建物の半地下の場所にいます。 打上げ2分前に「All system ready」が出たら後は待つだけです。 (※50年前の糸川博士、ペンシル、カッパなど往時のロケットや試験・開発の写真) このロケットも50年前はこの小さなロケット(※ペンシル)から始まりました。 垂直ではなく横に打ったんです。 ここにある電球は各担当のアクションがとれて……ええと、準備ができているかを示すものです。 (※「はやぶさ」のイラスト) 今日は「はやぶさ」のことを「祈り」という映像と一緒にお話ししますが、是非この後こちらで上映される 『BACK TO THE EARTH』を観て下さい。私は前座です。主役は彼、「はやぶさ」です。 片道30億kmという旅をした探査機ですが、「宇宙の大航海」にご興味ある方にちょっと宣伝です。 ※イカロス・メッセージキャンペーンの宣伝(割愛。ごめん) ※曽根先生、「あかつき」をことごとく「あけぼの」と言い間違える(パワポ画面はちゃんと「あかつき」) さてこの「祈り」、JAXA主体で作った作品です。 自分で自分のミッションを「祈り」と表現する時点でこのミッションがギリギリの状態であるということが お分かりになると思います。 ------------------「祈り」上映(カッコ内はおよその動画再生時間)------------------ 動画: http://spaceinfo.jaxa.jp/inori/index.html (「祈り」上映開始/00:11) 私はバッテリという1コンポーネントの人間でしかありません。 今はイオンエンジンの國中さんがリーダー的な役を果たしています。 「はやぶさ」の前には「のぞみ」という衛星が火星に向かいました。 火星の軌道には入れたのですが、周回軌道には入る事ができませんでした。 でもその「のぞみ」の経験があったからこそ今「はやぶさ」は飛んでいます。 (00:20 / 「流れるジャズの調べは、」〜) ジャズプレイヤーの甲斐さんが「はやぶさ」を応援して下さって、彼のために曲を作ってくれたんです。 「祈り」のBGMは全てそのCDの曲になっています。 (00:43 / 「しかし、その後「はやぶさ」は最大の危機に直面します。」〜) 「はやぶさ」は燃料の漏洩という探査機としてありえないほどの不具合を起こしてしまい、 一時は完全に見失ってしまいました。 この「祈り」の映像は、運用担当から見てもうまく現実をフォローしていると思います。 (02:20 / 「ココハ ドコダロウ」) ちょっとここで彼の外見について説明しましょう。 この4つついているのがイオンエンジン。 体を覆っている黄色いものは断熱材。サーマルブランケットといいます。ブランケット、毛布ですね。 ポリイミドにアルミを蒸着してできています。黄色いポリイミドにアルミの反射が加わって金色に見えるんです。 (03:10 / 打上げ) 打上げに使われたM−V(ミュー・ファイブ)、「エムご」ロケットは全段が固体燃料という珍しいタイプ。 ちょっと小型ですが一気に加速するタイプです。 この(ロケット先端の)白いのはノーズフェアリングといいまして、 衛星が大気にぶつかって壊れないよう守ってくれるものです。 (03:50 / 太陽電池パドル展開) ここが最初に神経をすり減らしたイベントでした。 彼のバッテリはフルで60分、1時間しかもちません。 その間に太陽電池に光を当てて自活できるようにしないといけません。 宇宙に出すまではロケットで送ってあげられますが、宇宙に出たら自分でエンジンをふかさなければ 遠い小惑星には辿り着けません。 打上げてそのまま直接小惑星に向かうには燃料が大量に必要です。 ですから(燃料節約のために)スィングバイをするため、最初は地球にもう一度近づくような軌道になります。 最初は寂しい旅です。 打上げまでは皆で集まって手をかけて開発します。 打上げはマスコミも取材してくれます。 でも打上げの後は注目もなく、淡々とした忍耐の運用です。 (05:50 / スィングバイ) さて地球に近づきまして、地球の重力で軌道を変えてもらいます。 これをアース・スィングバイといいます。 スィングバイ成功でミーティングがあったのですが、この成功で1つ心の重しが軽くなりました。 成功祝いの席で國中さんだったかな?ネットで「はやぶさの巣立ち」と検索したら ヒットしたページが本物の、つまり鳥のハヤブサの巣立ちについてのページ。 注目されてないなあ……と思いながらも運用は続きます。 直線では最大で3億kmですが、円軌道しかとれませんから道のりは30億kmになります。 その間、宇宙線で体はだんだん痛んでいきます。 彼はリアクションホイールという車輪で姿勢をコントロールしていたのですが、1つが壊れてしまいました。 (08:30 / 「はやぶさ」スタートラッカがイトカワを検知) 私の隣の隣……の隣が橋本樹明という方の研究室なのですが、ある日彼の部屋が騒がしいんです。 私は橋本さんを「樹兄ぃ(たつあにぃ)」と呼んでいるので「樹兄ぃ、どうしたんですか?」と 聞いたらボソっと言うんですね、「イトカワが、見えた」 (09:20 / 観察フェーズ) さあ、表面の観察がスタートしました。 「はやぶさ」の詳細設計が固まったのは1997年です。 ターゲットのイトカワは彼の打上げ前はまだ名前がなく「1998SF36」というコードネームでした。 この「1998」は発見された年です。 設計が決まってからターゲットとなる星が見つかったんですね。 そこには固体屋さん、固体惑星科学を研究している人が見たいものがあるらしいということで 決まったようです。 打上げ前に、嬉しいんだか悲しいんだかアメリカがその星の詳細な地上観測をやってくれましたが 予測ではもっと丸っこい形をいていました。 (11:10 / 「ラッコのおしり」のヨシノダイ・ボルダーを指して) でも実際はゴツゴツしてます、ほら、このポツンと置いたような岩とか。 月は細かいパウダーで覆われています。他の小惑星もそうです。 だからイトカワがこんな岩だらけとは思っていませんでした。 この「はやぶさ」の影に注目して下さい。 これを見たときは嬉しかったです。 私は電池屋ですから「太陽電池がちゃんと開いてる!」と安心しました。 (12:30 / 第1回リハ) まずはリハーサルです。 リハーサルといってもシミュレーションではなく実際にやります。何かあればクラッシュです。 この時のイトカワと地球の距離は3億km。 「はやぶさ」に呼びかけてから返事があるまで──往復電波遅延時間と言いますが──40分です。 だから「はやぶさ」も人工知能のようなものを持っています。危険を察知したら逃げるようになっています。 このイトカワの形が大変な驚きでした。 素人の私が見ても2つの大きい塊がくっついたような……メークインみたいですね。 「今日はカレーにする」と買い物に行くと息子が「今日はイトカワにする」なんて言って こんな形のジャガイモを選ぶのですが(会場・笑)、「はやぶさ」を運用する側は大変です。 横に長いので重力中心が「点」じゃない。 制御が大変で運用メンバは「カーブでストライクを投げる」と表現していました。 着陸前に「レーダーは本当に機能しているか?」ということで レーダー(注:LIDAR)の値と「はやぶさ」の影の大きさを比較してキャリブレーションしました。 (16:00 / ミネルバ分離) この頃、「はやぶさ」はイトカワから逃げよう逃げようという動きをしていました。 このミネルバを切り離した時もちょうどイトカワから逃げようと高度を上げた瞬間で、 ミネルバはイトカワに降りられませんでした。 ミネルバが撮影してくれた「はやぶさ」の写真は「本当に電池パネルが開いているんだ」と 電池屋の私は嬉しかったです。ミネルバに感謝しています。 (17:40 / 第1回タッチダウンでの不時着) 「障害物を避けながら降りろ」という命令と「逃げよう」とする判断とで迷ってしまったんでしょうね。 どこへ行けばいいのか、どうすればいいのか、途方にくれながら──こうしてバウンドまでして── 着地したと考えられています。 実はこの時、運用側は彼を認識できていませんでした。これは非常に危険な状態です。 彼の太陽電池は接地するようにはできていませんし、砂漠の炎天下に衛星を野ざらしにするようなものです。 大気がないからそれより危険です。熱が逃げませんから。 100℃が限界です。それを超えると機器が不具合を起こし始めます。 だから「とにかく離脱しろ!」という命令を送りました。 「はやぶさ」は無事でした。──そう思われました。 1回目の着陸の後に、若手と中堅が「やることはやった、さあ『はやぶさ』を地球に帰そう」と 話していたら、川口先生が部屋に入ってきて「次行くぞ!」(笑) 2回目の着陸はいろいろ無視するようにしまして「とにかく、いいから降りろ」と命令したと考えて下さい。 この頃は2つめのリアクションホイールが故障しています。 ただ化学スラスタはまだ元気でしたのでパルス噴射するなどで姿勢を制御していました。 スラスタの三菱さんにも協力してもらって。 (21:30 / 第2回タッチダウンでの接地寸前) 最後は「太陽に押してもらって」イトカワにキスしました。 この時にサンプルが入ったと私たちは期待しています。 (21:50 / 「タッチダウンに成功してイトカワ表面から離陸した後」〜) 採取に成功したと思いました、思っています。 この時「あとは帰る算段だよね」と話していたと思います──「はやぶさ」の信号が途絶えてしまったんです。 彼は見つかりました。 でもデータを降ろしてみたら彼が積んでいるどの機器もめちゃめちゃなデータで、バッテリも死んでいました。 おそらく1回目のタッチダウンでスラスタの配管にダメージを受けたのだろうと考えられています。 スラスタの燃料はヒドラジンです。0〜2℃で凝固します。 宇宙空間ですからできれば低温に耐える燃料にしたかったのですが、そういうのは炭素を含んでいます。 「小惑星の材質に炭素が含まれるかどうか」は重要なテーマでしたから、サンプル汚染を避けようとすれば そういう燃料は使えない。たぶんそういう事情があったのでしょう。 彼の体の中で燃料の気化と爆発が繰り返されたのだと思います。 探査機というものは姿勢安定軸を持っています。 「最後は必ず回転が軸に収束する。どこかで必ず電波が届く。生きていると信じて探してやってくれ」 そう運用の方に言われました。 7週間、返事のない宇宙にアンテナを向ける日々が続きました。 「はやぶさ」からの電波を見つけた方は彼のシグナルが元気すぎて「本当に『はやぶさ』?」と アンテナを振ったそうです。結局、翌日に復活の知らせがチームに届きました。 (25:00 / 地球帰還) 彼は帰ってきます。そう信じています。 帰って来る時期と場所はもうすぐJAXAから発表があります。 以前は「空に1筋の涙が見えたら成功」と言いました。 2筋だったらカプセルが割れてしまったという意味だから失敗だと。  ※http://www.isas.jaxa.jp/ISASnews/No.239/mspace.html でも今は「2筋見えたら成功」になります。──本体も落ちるからです。 最初、彼はまた宇宙に旅立つ予定でした。でもそんな余力はもう彼にありません。 カプセルを切り離した後、地球の夜の面に入った瞬間に彼は力尽きます。 (26:20 / 「イトカワ表面の地名はチームが使っている愛称です」) 地名は非公式のものもあります。思い入れのあまりつけた名前です。 (「祈り」上映終了) もうちょっと、もうちょっとで帰ってきます。 運用チームからは「推進剤は十分にある」と昨日聞いています。 ------------------再びパワポ画面に戻る------------------ イトカワは「こんな形とは」と驚きでした。 (※「はやぶさ」のカプセル部の写真と「はやぶさ」地上試験時の写真) 「はやぶさ」の体は燃え尽きてしまいます。カプセルが唯一の「地上に帰って来る『はやぶさ』の一部」です。 カプセルはこの位置にあります。 横に立っている人は私とほぼ同じ身長なので、「はやぶさ」が意外に小さいとお分かりかと思います。 「はやぶさ」は工学実証が目的です。 新規技術の宇宙での動作確認を目的としたもので、サンプルの採取・回収はその1つです。 新規技術の中には宇宙用に開発したリチウムイオン電池もあります。 マーズ・エクスプレスもリチウムイオン電池を乗せましたが、あれはソニーの民生品でした。 「宇宙用」は「はやぶさ」が世界初だと思っています。 (※地球スィングバイ時の連続写真) 鹿児島県から打上げた「はやぶさ」がもう1度地球に近づいて、地球に別れを告げた場所はちょうど 鹿児島の真上でした。 (※イトカワの非公式地名付地図 / http://www.isas.ac.jp/ISASnews/No.315/ISASnews315p.pdf) イトカワはスカスカの構造であるようです。 小惑星の起源について「がれきの寄せ集めでできた」という説がありますが、その最初の証拠が イトカワだと言われています。 「はやぶさ」のタッチダウンは「quick kiss」と海外に表現されました。 (※臼田スペクトルアナライザの写真) 着陸の時はアンテナが地球の方向を向かないので、元気かどうかを示す電波だけが届きます。 しかしこの電波も届かなくなりました。 見つかった時はだいたい1分に1回という回転をしていて、20秒間しかこちらの電波を受信できないとわかり ブツ切りでメッセージを送りました。 その後、「あの機器は元気?」という問いに0か1、つまり「元気」「元気じゃない」だけを返すという ことを繰り返して「はやぶさ」の健康状態をチェックしました。これは「1ビット運用」と呼ばれました。 その中でカプセルの蓋が閉まっていないことがわかりました。 ちょっと専門的になります、ごめんなさい。私は電池屋なのでその話を。 バッテリも死んでいました。 「はやぶさ」のバッテリは11セルが直列に繋がっているもので、その内プラス側の4セルが過放電していました。 運用チームにカプセルの蓋閉めのために言われたのは「28V, 2A, 4回のパルス」というもの。 1セルで4Vですからギリギリで要求を満たせました。 リチウムイオン電池は炭素とコバルトの間でリチウムイオンをやりとりするものです。 しかし過放電状態では電極である銅がイオン化して溶け出した状態になっています。 (※メモ欠落のためこの部分不確実※)することでこのイオン化した銅を戻せるのではないかと思いました。 リチウムイオン電池は充電のし過ぎを防ぐために overcharge circuit、過充電回路というものを 組み込んでいます。この回路を通じて非常に弱い電流を流しました。 100日以上繰り返して、(実作業時間は)合計40日かけて充電に成功しました。   (会場の子供に)難しい話でごめんね、あと1分くらいだから。 そうして蓋閉めに成功する事ができました。 (※ニコイチ・エンジン模式図) 昨年11/04日、私もギクリとした出来事が起きました。 エンジンが止まってしまったのです。 しかしこれはイオンエンジンチームが裏技を使ってくれました。 軌道上で壊れた2つのエンジンからそれぞれ使える部分を組み合わせ、新品のエンジンを作ってくれたんです。 トラブルが起きてから20日くらいして(レポ主注:「5日」の言い間違いか?)運用会議が開かれました。 「残念だ」という言葉が(会議招集メールに)あると思ったら 「一縷の望みを託してお集まり頂きたいので、宜しくお願いします」と来て興奮しました。 しかし会議では技術者らしく淡々と対策と根拠が披露されました。 (※方探訓練の写真) 地上も訓練がスタートしました。 去年6月……いや5月……4月……? (レポ主注:後述の通り、到着時期について箝口令が敷かれたため意図的にボカしたと思われる) とにかくまだ寒い時期に砂漠でカプセル追跡の訓練をしました。こうやってアンテナを設営したりですね。 どちらかというと「人間が冬の砂漠に耐えられるか」を確認したような……。 (※方探訓練の夜の写真) この方は山田准教授。あまりの寒さに機材梱包に使った毛布を頭から被っています(笑)。 (※砂漠の夜空の写真) 砂漠ですから、夜空は本当に綺麗でした。 今このドームに投影されているような空が見えるんです。 私の頭にあったのは「宇宙戦艦ヤマト」です。 地球を救うために「ヤマト」が向かったのが、この(写真に写っている)大マゼラン星雲です。 子供のような大人たちが知恵と勇気でプロジェクトを進めています。 (※内之浦の写真) 内之浦でも訓練を行いました。 M台地と岬の間にカプセルに見立てた気球を飛ばして、M台地のチーム、岬のチームが互いに 連携しながら追跡するという訓練です。 (※深宇宙サンプルリターンの将来図) しかし「知恵と勇気と冷や汗」は不具合の結果です。自慢できるものではありません。 (レポ主注:ここらへんの1分程度、メモ欠落) ご清聴ありがとうございました。サッカークラブの皆、ありがとね。 (※50年前の糸川博士、ペンシル、カッパなど往時のロケットや試験・開発の写真 再び) たった50年前のロケットはこうでした。 私が40歳くらいですから、50年前というと私が生まれるちょっと前です。 子供のような大人、と言いましたが「子供の頃思ったことは意志さえあれば現実になる」と思います。 次の50年でもっと広い宇宙へ探査機が行って帰って来るようになって欲しいと思います。 【質疑応答】 Q:なんで「はやぶさ」という名前なの?(子供) A:募集しました。   ガンダムじゃないけど(笑)昔の古いロボットアニメの主役の名前もあったらしいです。   (レポ主注:「アトム」のこと)   募集の結果「はやぶさ」がいい、となりました。   これはただの偶然なのですが、第二次世界大戦の前に開発された戦闘機に「隼」というものがありまして、   糸川博士が開発に関わっていたんだそうです。   あとこれも偶然ですが、昔宇宙研の人が内之浦に行くのに使っていたブルートレインの名が「はやぶさ」   だったそうです。 Q:「はやぶさ」が持ち帰るのは地球に存在しないもの?(少年?女性?) A:これは私が調べたことではなく、読んだ知識ですのでごめんなさい。   小惑星の成分は隕石に比較的近いそうです。イトカワは典型的だと。   じゃあ何故わざわざ宇宙まで取りに行くのかと言うと、隕石は大気圏突入で燃えた石だからです。   宇宙線以外の影響を受けていない試料がほしいからです。 ええと、際どい質問もOKですよ(笑)。 今日、私のお目付役として杉浦さんという方が来ています。 彼女はサンプル到着地で私たちの生活全般の手配をしてくれる「お母さん」的な役目の方ですが 私はサッカーチームに関わっていますから、彼女にレッドカード、イエローカード、ホイッスルを 渡してあります。(会場・笑) 私が喋って杉浦さんがレッドカードを出したら私は退場です!(会場・笑) Q:スラスタ燃料はジメチルヒドラジンと推測するが、ジメチルヒドラジンはハイパゴリック性があるはず。   酸化剤との混合による爆発リスクはどの程度ある?   また、「はやぶさ」とイトカワとのランデブーはTバー方向かvバー方向か?   (壮年男性。元ロケット関係者とのこと) A:まず1つ目ですが、燃料はジメチルではなくピュアのヒドラジンです。   メチル基による試料汚染を避けるためでしょうか?   爆発リスクについては、ヒドラジン、酸化剤ともにタンクは空になっています。   (機内残量は知る術がない、というニュアンス)   2つ目の質問ですが、専門用語の使い方を間違えるのを避けたいので普通の表現をさせて下さい。   「はやぶさ」は完全に太陽を背にした状態でイトカワに近づきました。   「はやぶさ」は太陽電池の向きが太陽からずれるとバッテリモードに切り替わりますが   バッテリがほとんど満充電状態だったことがその根拠です。 Q:カプセル到着場所の予測は立つのか、海の上に落ちる可能性は? A:……杉浦さんがイエローカードを出しました!(会場・笑)   まず「海の上」はありません。沈んだら回収できなってしまいますから。   到着場所の範囲は限定されています。人家に被害を出すわけにはいきませんから。   場所と時期については今言うことはできません。   (杉浦氏に)……でいい?……OK出ました!   まもなくJAXAから発表が出ます。国際協定があるもので…… 最後に、皆さんにお願いがあります。 今日私がもごもごした部分については、彼が無事に帰ってきたらもう1度、もごもごせずに お話しさせて下さい。(会場拍手) カプセル到着予定地にはビデオも持って行きます。撮影はやります。その映像をお見せしながら。 館長氏:これは……ぜひ検討しなくては。 (本編は以上) 【ぶら下がり】 Q:私は自分のブログに DSN スケジュールへのリンクを貼っている。   到着時期と場所を伏せておいでだったが、リンクを外した方が良いか? A:外部の方がご自身で得られた情報を伏せる必要はありません。   ただJAXA関係者は「言うな」となっています。近々出る公式発表までは。