「宇宙探査の始動 〜Inspire the future〜」 2009/03/14 於:パシフィコ横浜 ※メモからの書き起こしなので誤りを含む可能性あり、注意。 ※意見交換セッションについては  本ファイルと同一ディレクトリに「20090314_2.txt」があります [ 第1部 音楽と探査映像の世紀 ] 1)「はやぶさ」に思いを馳せたジャズの調べ ・今回の編成はキーボード、サックス、ギター、ベース、ドラム  (二胡、ボーカル不在)のため『Lullaby of Muses』CD版とは異なるアレンジ ・ステージ無人のまま照明が消え  「コントローラ、スタートします。よーい、はい1分前、59、58……」  と M-V 打ち上げカウントダウン音声開始。  カウントダウンの中、演奏者はセッティング開始。  バックグラウンドムービー は「祈り」冒頭部〜内之浦射場〜M-V-5 打ち上げ直前。  カウントゼロで映像は M-V-5 リストオフ(轟音付き)、そして「Lift off」演奏開始。  (※CD 版だとエンデバー打ち上げカウントダウンで始まるので    今回の演出で溜飲が下がりましたな) ・2曲目「Space Passion」3曲目「My Rose」4曲目「Back to My Arms」 ・以上、映像は「祈り」ダイジェスト。 ・次演奏者セッティングの間に甲斐氏のトーク。  「『はやぶさ2』はいつ打ち上げ?と『はやぶさ2』責任者の方(=吉川先生)に   こっそり聞いたら『わからない』と。なぜ?と聞いたら『予算が……』だそうです」  (会場「あー、言っちゃた〜」的笑い)  『Lullaby of Muses』作成経緯  (みさと天文台長の尾久土氏の発案、ISAS 矢野博士の協力とレクチャー、   実際の機体の見学……など)  「私はあえて『はやぶさ君』と呼びますが、実際に『会った』時は本当に小さくて   きれいだと思いました。科学者の皆さんは『はやぶさ君』のお父さんですよね」  というわけで「お父さん」川口先生が引っ張り出される。  川口「発案はもう15年前ですから(『はやぶさ』は)子供みたいです」   甲斐「行方不明になった時には諦めかけていましたけど、通信できた時は   小さな声が『僕はここにいる!』と言っているように思えました」  川口「西山さんという方が受信に気づいたんですが、彼は自分が信じられず   アンテナを振って本当に『はやぶさ』の方角かを確かめたそうです。   僕も聞いたときは『本当に本当?』と」 2)「かぐや」が見た月と音楽の協演 ・編成はボーカル、キーボード、ネイティブアメリカンフルート他 ・地球の「ダイヤモンドリング」映像〜HD画像、地形カメラデータから生成した3D動画  をバックグラウンドに「AQUA〜惑星(ほし)に還ろう〜」  ※後日 JAXA が再現してくれました。   http://www.youtube.com/watch?v=CXwD0GPRBXM ・2曲目「Moon River」3曲目「荒城の月」4曲目「春夏秋冬」(3、4曲目映像なし) ・土居「土井さん(宇宙飛行士・土井隆雄氏)の前で歌えて今ちょっと   テンションおかしいですが、土井さんがエンデバーに乗っていた時の   Wakeup Call として流していただいた曲です」  ──5曲目「ふるさと」(映像:満地球の出)  ※後日 JAXA が再現してくれました。   http://www.youtube.com/watch?v=mxJjNW_8QMg [ 第2部 宇宙探査、構想から実演へ Are you ready to go? ] 1)開会の挨拶(川口 淳一郎 JAXA JSPEC プログラムディレクタ) ・宇宙開発は「文化」であると思っています。  我々の「宇宙開発」が映像、音楽といった別文化に刺激を与えるのも嬉しいです。 ・地球の「ダイヤモンドリング」映像で地球のフチがオレンジ色をしていましたが  あれは夕焼けと同じ。大気があるから。 ・探査は月以遠に展開する活動。  「未踏の地」は無人で、「未開の地」は有人でやっていくべき ・今回のイベントのタイトルは「宇宙探査の始動」ですが、僕は「始動」でなく  展開、継承だと思っている。  JR の「はやぶさ」は廃止になってしまったけど、宇宙探査のほうは  次の世代へ、新しい探査を展開するのが大切。 ・今日、同じ会場で「日本ボートショー」をやっていますが探査機も「船」です。  新たな港を作る、人間の行動領域を拡大する、それが宇宙開発。  探査はその骨格である、という自負があります。 2)今後の探査への期待(室山 哲也 NHK解説委員) ・「かぐや」HD映像は後輩が関わっていますが「ハァハァしながら」(※発言ママ)  「撮れました」と興奮して連絡くれました ・科学的な話は専門家に任せて、自分は外縁部の話を。  「ヒトを見すぎるとヒトがわからなくなる」 by 旭山動物園園長・小菅正夫氏  知らない世界を見ることで自らを知ることになる。  宇宙は驚きに満ちている。  冒険心──知的好奇心と言い換えてもいい──が探査を支える人間の本性。  ほ乳動物の子供は「母親という『基地』から周囲を探検に出かけて帰る」が  ヒトは成人しても『基地』を母親から家族、社会と移して同じ事をする。 ・知的好奇心と創造はセット。 ・人類は冒険の動物。  アフリカで誕生し、世界中に拡散していったがその理由は「人口増大」だけでは説明できない。  「山の向こうに何がある?」で移動したのだろう。  「好奇心が消えたら人間の進化は終わり」という人は多い。  「かぐや」のHD映像を見て「知ってはいたけど、見てびっくりした」と言ったのは  国立天文台の大先生だったっけ?  (※NHKの「かぐや」特番で同趣旨の発言されたの、どなただったっけ?) ・冒険とは生きることそのもの。 ・「我々はどこから来たのか 我々は何者か 我々はどこへ行くのか」(ゴーギャン) ・「『部分的にリスクを負う』なんて不可能だ 〜(略)〜 リスクを負う人間だけが、真に自由である」  (フレデリック・ウイルコックス)   ※全文:ttp://kainaguri.blog113.fc2.com/blog-entry-41.html 3)月探査計画について(大竹 真紀子 JAXA 月・惑星探査プログラムグループ助教) 「SELENE の成果〜分光カメラを中心に〜」(※ガチで理学成果の講演です) ・第一部で地球が「ふるさと」であり「パラダイス」だとおっしゃっていましたが  研究の面から言えば月がパラダイス!(会場笑)  だって、月は動かない(プレート移動がない)から古い地殻も見られるんですよ。 ・(かぐや緒元の説明/割愛) ・「かぐや」のミッションの目的は   1:観測   2:将来の月探査に向けた技術開発(月への投入、軌道制御、通信系)   3:(HD映像での)アウトリーチ  「かぐや」の画像、映像は「かぐや画像ギャラリー」で公開されています。  「ぐぐれば」(※発言ママ)出てきますからぜひご覧下さい。 ・第一部で地形カメラの3D映像が出た時も、自分はついメルト(溶岩の飛散痕?)や  ポンド(溶岩が溜まって?平らになった所)に注目してしまい情緒的になれない(苦笑)。  あの3D映像でクレーターの底も真っ平らではないことが判明しまして、  平らだと思ったのに、こりゃぁうかつに着陸できないぞと。 ・月起源について最有力は巨大衝突説だけどまだツッコミ所があって完全ではない。  マグマオーシャンはあるのか?コアはあるのか?組成はどうなっている?  それらを確認する必要がある。で、「かぐや」ですよ! ・自分が担当しているのはマルチバンドイメージャ(以下 MI )。月面反射スペクトルの観察です。  0.4 〜 1.55 μm(可視長光〜近赤外線)の反射の具合を調べて  鉱物・岩石の種類 / 地殻・海の進化 / 月の起源、進化 を探ります ・「かぐや」の MI は空間分解能が高く(20 m / pixel)、いままでなかった波長も調べられる  (クレメンタインの分光データ VS 「かぐや」データの分光データで解像度アピール) ・中央丘ができる規模のクレーターを主に調べる。  中央丘は地下深くから盛り上がってできるので組成調査の役に立つ  で、中央丘を MI で見てみると場所によって表面に出ている鉱物が異なる。  「かぐや」のデータは新しいことがどんどん見つかって幸せ。でも「解明せい!」となって大変。 ・「かぐや」は1日に6ギガのデータを降ろすので圧倒的に研究者が足りません!(会場笑)  いや本当に!研究者になって下さい。  SELENE-2 検討中。今度は着陸ミッションの予定なので皆さんよろしくね♪(研究者になってね♪) ・Q「月の引力について」(※質問者発言ママ)  A「えっと…… 地球の6分の1。……という答えでいいですか……?」 ・Q「『かぐや』の観測は想定通りですか?」(※質問者発言ママ)  A「無事に終えて、今は Extra…… 延長ミッション中です」 ・Q「月の裏側の観測予定はありますか?」(※質問者発言ママ)  A「MI では全球の 98 % 以上を観測したので、裏側も観測しましたよ」 4)小天体探査計画について(吉川 真 JAXA 月・惑星探査プログラムグループ准教授) ・(「『はやぶさ』について」とタイトルのみ表示された画面を提示)  「ここにおいでになるような皆さんに改めて説明する必要もないかも知れませんが   ……と思ってたのに川口先生が先に(このネタを)言ってしまいました……」  (寝台特急「はやぶさ」の写真登場。「03/13ダイヤ改訂」の説明付き。会場爆笑) ・「祈り」3分間ダイジェスト版を流しながらミッション目的と経過、地球帰還予定を説明。  (なおダイジェスト版の楽曲は『Lullaby〜』ではなくソフトロック調のシンセ楽曲。   動画下部に「by 吉住千亜紀」とあったので元・徳島県立あすたむらんど の吉住氏の作曲か?) ・(現在の状況説明。   02/04に再起動、順調に運用、リエントリに向けた各種作業が本格化) ・満身創痍ながらも順調です。ちょうど先週は自分が運用担当でしたが本当に順調。  本当は今日も運用当番だったのですが(苦笑)。 ・(イトカワの地名が増えた件)  今回の地名決定の前についた「MUSES-C Regio」は  「ミューゼスの海(MUSES SEA)」と申請して「狭いから SEA じゃない」と IAU に拒否された  経緯があります。イトカワ自体が狭いんだから仕方ないじゃないですか!(会場笑) ・「なぜ小天体を探査するのか」に対する「5+α」のキーワード ・キーワード1「科学」  生命、太陽系(原始太陽系星雲)の起源と進化を探る。  なお「はやぶさ」の理学成果は最近 0.55 μm、近赤外線でのイトカワのアルベドマップが  できました。  あとは小天体の内部構造と形成過程(を探る)。  ※(HAYABUSA〜BACK TO THE EARTH〜より)「イトカワを縦にまっ二つ」映像。    ttp://www.sci-museum.jp/server_sci/promot/img/pro_t_6.jpg  「ちょうどアニメですと五右ェ門が斬鉄剣でカパっと切ったような映像ですが」(会場笑)  ※ただし、あくまで「空隙率40%」を再現しただけであって実際にこうなっているかは不明だと   注釈されていました ・キーワード2「スペースガード」  2008年10月にスーダンに落ちた隕石は「初めて衝突予想がされ、その通りになったケース」 ・キーワード3「宇宙資源」  「クレオパトラ」というM型小天体は鉄、ニッケルのかたまり ・キーワード4「有人ミッション」  有人月探査の次はいきなり火星ではなく、有人小惑星探査を踏むべき ・キーワード5「技術」  「はやぶさ」の経験から、次はもっと確実にやれる。  ……ところで「はやぶさ」の技術を体感していただきたく、阪本先生にペーパークラフトを  作ってもらいました。ただしβ版ですので作り方のマニュアルはありません。  Webにアップしましたのでどうぞ挑戦してみてください。  (ttp://www.isas.jaxa.jp/j/enterp/missions/hayabusa/fun/papercraft.shtml)  ターゲットマーカー分離します、ミネルバ分離します、再突入カプセルも外れますし  サンプラーホーンも伸びますよ?(会場、技術の無駄使いっぷりに呆れながら爆笑) ・キーワード +α「文化創造、次世代育成」  小天体探査でなければできない、というわけではありません。  でも小天体探査でやってもいい。  「はやぶさ」のアウトリーチの数々は最初からやろうとしていたわけではなくて  自然発生的にメンバたちが始めたこと。  (ファンの応援創作を紹介して)こうしてリアクションもあった。  ここでアウトリーチの例として「HAYABUSA〜BACK TO THE EARTH〜」の予告編を  公開します。私も昨日受け取ったばかりですので初公開です。  ※後日公式に Web アップされました。   http://www.youtube.com/watch?v=6tr2__Tv2I4  私としては「シリアスすぎる」気がします。ハンカチが必要になりそうです。(会場笑) Q:「はやぶさ2」はどう応援すればいいんでしょう?(会場拍手。考えることは皆同じ……) A:いい質問ですね、私よりも経営陣に答えてほしいです(会場笑)。   ……皆さん、ご声援お願いします……。 司会嬢:具体的には、皆さんのご家族ご友人にぜひ「はやぶさ」「はやぶさ2」をアピールして下さい 5)意見交換セッション ー探査活動の未来ー モデレータ: 山根 一眞 ノンフィクション作家 登壇者: 室山 哲也 NHK解説委員      川口 淳一郎 JAXA 月・惑星探査プログラムディレクタ      加藤 學 JAXA 月・惑星探査プログラムグループ教授      吉川 真 JAXA 月・惑星探査プログラムグループ准教授      土井 隆雄 JAXA宇宙飛行士 ※長大なので別ファイルに分けます。  本ファイルと同一ディレクトリに「20090314_2.txt」を置きます。 6)閉会の挨拶(樋口 清司 JAXA 月・惑星探査プログラムグループ統括リーダ) ありきたりな挨拶をするよりも、第一部で演奏者の皆さんがそうしたように JSPEC のメンバを紹介したいと思います。 (と、会場内の JSPEC メンバを壇上に上げ一人一人紹介。最後に) 土井さんもいつかは入って下さるものと期待しています(にっこり) 司会嬢:来週月曜以降に本日のイベントの感想、応援メッセージをぜひメールでお送り下さい  ※JAXA トップページの URL を提示。